自転車に乗っているとき、自分は慎重な性格だし、スピードも出さないから、事故なんて起こさないと思っていませんか?
こちらが気を付けていても、車に乗っている相手が違反したり、よそ見運転をしていると、接触事故は起こってしまうものです。
そんな時に、自分も自転車も無傷だったり、軽傷でも、相手に届けを出さないように頼まれたり脅されたりしたら、あなたならどうしますか?
事故の時、自分の身を守るために、どんなことに気を付けるべきか、一緒に考えていきましょう。
自転車で接触事故!加害者側の義務って?
車と自転車との接触事故といっても、双方の速度が遅く、少し転んだだけで、無傷の時もありますよね。
急いでいたり、大げさにしたくなかったり、相手から謝られたりすると、警察を呼ぶほどでもないかな、と考えてしまいがちです。
そんな時にまず思い出して欲しいのは、交通事故において加害者側には、2つの義務があるということです。
1つ目は、救護義務です。
事故で傷ついた人を、そのままにせず、助けるために最大限努力しなければなりません。
手当てをし、安全な場所に避難させ、場合によっては救急車を呼ぶなど、被害者の救護を最優先にして行動する義務があるのです。
自分が窮地に陥りたくないからと言って、相手の様子をよく確認もせず、平謝りをして見過ごしてもらおうとする加害者には、毅然と接するべきです。
2つ目の義務は、警察への届け出をきちんとすることです。
人身事故や接触事故が起こった時は、後日ではなく、その場ですぐに、被害届を警察へ届け出なければならないのです。
警察を呼ばないのは法律違反になり、後日、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。
無傷だから物損事故?それでも届け出が必要な理由
自転車で走行していて車とぶつかってしまったとき、体は無傷で、自転車だけ少し傷がついてしまったとしたらどうしますか。
高額なスポーツ自転車に乗っている人は、体より自転車の方の傷が気になるかもしれませんが、安い自転車に乗っていると、被害届を出すほどでもないと考えてしまうかもしれません。
しかし、道路交通法では「車両等の交通による人の死傷、もしくは物の損壊があったとき」届け出義務が発生すると定めているのです。
ということは、物損事故であっても警察への届出義務があるのです。
手続きがめんどうだからといって、警察への届け出義務を怠ると、後で保険金を請求する時に不利になります。
まず、被害届を出さない場合、「事故証明書」が発行されません。
加害者が後になって、事故なんて知らない、自損事故じゃないかと、しらを切ることも十分あり得るのです。
事故にあったうえ、被害者としての言い分を主張できず、心も傷つけられてしまっては泣きっ面に蜂ですね。
事故証明書がなければ、加害者に請求できないというわけではありませんが、事実を証明する重要な証拠がないということになりますので、後日、保険金の請求に大きな支障をきたします。
また、事故の時には気が付かなかった痛みが後から出てくる場合もあります。
サドルが少し曲がっただけだと思っていたら、時間が経つうちに足首が痛くなったりするケースもあるのです。
こういうところが、接触事故の怖いところです。
その場で安易に、ただの物損事故と決めつけると、後で後悔することになるかもしれません。
接触事故で無傷に見えても後遺障害が残るかもしれない
さきほど少し触れましたが、接触事故において、事故の時は興奮していて気が付かなかった痛みが徐々に出てきたり、無傷のように見えても体の中で異常が発生していることがあります。
「自転車には少し傷がついたけれど、怪我はないから物損事故で届けよう」
「むちうち症状もないし、首も背中も頭も痛くないから、診断書なんて大げさだ」
なんて思っていると、後で困ることになるかもしれません。
事故から数日、遅い場合は1週間後から1ヵ月後に頭痛や腰痛、耳鳴りが発生ケースはよくあることなのです。
自転車での事故の後遺障害として、考えられるのは、椎間板ヘルニア、脳障害(高次脳機能障害)・記憶障害、むちうち症です。
自転車の事故でも、むちうちが起こるの?、と意外に思われる方もいるかもいれません。
もちろん起こります。
車とぶつかったとき、自転車は丸裸のようなものですから、ヘルメットで頭自体は守られていても、首に負荷がかかってしまうことがあります。
自分では気が付かない体の異常が、検査してみて初めて分かったときに、被害届も出しておらず、相手の連絡先も知らない状況では、治療費も自分で支払わなくてはいけません。
自転車での接触事故でも起こる後遺障害について知ろう
では、ここからは接触事故の隠れた後遺症になりがちな3大傷害、「椎間板ヘルニア」「脳・記憶障害」「むちうち症」について、詳しくご説明していきます。
まずは、椎間板ヘルニアから簡単にご説明します。
自転車、車、バイクなどの乗り物に乗っていて、偶然事故によって体に強い衝撃が加わると、椎間板が本来あるべき位置からずれてしまい、背中の痛みや、腰の違和感を感じることがあります。
これが、椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアの場合、事故の直後は、痛みもめまいも頭痛も吐き気もしないし、無傷に見えますので、自己判断が難しいものです。
腰に痛みを感じる場合もありますが、事故直後は相手や警察とのやりとりで興奮し、気持ちも張っているため、気がつかずに徐々に痛みが大きくなるケースもあります。
しかし、これが後々の後遺症にまで発展してしまうかもしれません。
後遺症や後遺障害として認定されるためには、痛みを訴えるだけではなく、画像や診断書などの証拠が必要になりますので、医師と話し合って警察・保険会社に提出する診断書を書いてもらいましょう。
また、もともと腰痛の持病をお持ちなら、事故前と事故後の症状の変化についても、正直に医師に話して診断書に明記してもらいましょう。
こうした事情からも、事故直後にすぐ病院で見てもらうことは大切です。
無傷と安心してはだめ!診断が難しい脳障害って?
接触事故の3大傷害の中でも、非常に怖いのが、脳障害(高次脳機能障害)です。
どこかでお聞きになったことがあるかもしれませんね。
事故によって頭に強い衝撃を受けると、外から見たら無傷でも、脳に異常が発生することがあるのです。
脳障害の症状としては、おもに、次のような障害が現れます。
それは、記憶障害、感情障害、注意障害です。
重度のものになると日常生活もままならないほど深刻な場合もあります。
人によっては自覚症状が出ない場合や、出たとしても事故前との違いが分かりにくく、家族にも気づかれない場合もあり、非常に怖ろしい症状です。
例えば、事故の前と性格が変わってしまったり、物忘れが多くなったりミスが多くなったり、感情が不安定でキレやすくなったりした場合、高次脳機能障害の可能性が高いと言えます。
どの症状も、事故の衝撃が原因とは気が付きにくいものです。
また、日本では脳障害、高次脳機能障害は専門の医師が少なく、専門外の医師が診察しても事故との因果関係を証明できない場合があります。
そのため、後遺症・後遺障害と認められるのが難しいのです。
万が一、事故にあって、自分をコントロールできなくなるような症状が出始めたら、すぐに検査し、診断を受けたらすぐ弁護士に相談し、治療方針や今後の対策について考えましょう。
自転車での軽い事故と侮り、一生を棒に振るようなことは、絶対にあってはいけません。
自転車での接触事故でも起こる!むちうち症の診察はお早めに
最後にむちうち症ですが、自覚するまで長い人で、1週間以上かかる場合もあるので、事故との因果関係を証明しにくいものです。
接触事故にあった場合は、無傷で痛みがなくても、必ずその日か翌日には病院で診察を受け、、レントゲンを撮ってもらいましょう。
微熱がある場合も、もちろんです。
なお、レントゲンで異常がなかったとしても、後遺症になる可能性がありますので安心してはいけません。
レントゲンで異常がなくても、自覚症状があれば、必ず診断記録や診断書に記載してもらいましょう。
また、医師の診察前に、マッサージや接骨院を受診すると、保険会社に後遺症の慰謝料などの請求が難しくなるかもしれませんので、気を付けてください。
まずは、事故にあってすぐ、その状態のままで診察を受けることが重要です。
自転車と車との事故の場合、自転車のほうが弱い立場として守られますが、相手の保険会社が強気な主張をしてきて、こちらの過失を認めさせようとすることもあるので、過失割合をしっかり主張しましょう。
1人では難しいと感じたら、無料相談を受け付けている弁護士もいますので、相談してみるといいかもしれません。
被害者として、治療に十分な金額の慰謝料を受け取る権利があるのですから、あきらめないようにしましょう。
事故にあったら軽傷でも警察へ届け出て医師の診察を受けよう
自転車で接触事故に巻き込まれた場合は、たとえ無傷でも、警察へ届け出て、事故証明書をもらい、病院に行きましょう。
この記事では、椎間板ヘルニア、脳・記憶障害、むちうち症についてご説明しました。
いずれも、長期にわたる通院での治療が必要ですので、加害者から十分な金額の慰謝料を受け取るためにも、事故の時に情に流されたり適当に判断したりせず、警察を呼びましょう。
考えたくはないことですが、後遺障害が残った場合、保険会社とのやり取りは複雑で対応が大変です。
親身になって相談にのってくれる弁護士を探すのも、選択肢の一つとしてあるということを覚えておきましょう。