近年のスポーツバイクのブレーキは、ディスクブレーキがトレンドになっています。
MTBはもう独占状態ですし、クロスバイクもは明らかに5割は超えているイメージです。
そして、かつては無縁かとも思われていたロードバイクにも確実に進出してきており、レースでも好結果を収めています。
今回はメリダ・スクルトゥーラのディスクブレーキモデルにスポットを当て、ロードバイクにおけるディスクブレーキの是非なども考えてみます。
ディスクブレーキの種類と仕組み
まずは、ディスクブレーキについてご説明します。
ディスクブレーキは車輪中央の「ハブ」に取り付けられたディスクローターを、樹脂や金属製のブレーキパッドで挟み付けて回転を止めるものです。
ディスクブレーキには作動方法が2種類あります。
一般的なブレーキと同じく、本体のアームとレバーがワイヤーで繋がっており、レバーを引くことでワイヤーが引っ張られアームを動かす仕組みのものが「機械式」。
ブレーキオイル、ブレーキフルードと呼ばれる、特殊な液体の油圧でピストンを動かすのが「油圧式」になります。
おおまかにですが、コストの関係から安価な完成車は機械式、10万円半ばを超えてくると油圧式が多くなります。
ちなみに、メリダ・スクルトゥーラにはディスクブレーキ搭載車が4機種ありますが、10万円台前半のものが機械式、あとは油圧式になります。
ロードバイクにおけるディスクブレーキのメリット
ここではディスクブレーキのメリット・デメリットのお話をします。
まず、地面から遠い車輪の内側で制動動作が起こるので、泥や水がはねにくくローターに付着することが無いので、外的要因に左右されない安定した制動力が確保できます。
これは一般的なブレーキは直接車輪の回転を止めるためホイールの外周部分に働きかけるのですが、外周は汚れやすいですし傷なども付きますので、安定感はディスクブレーキに劣ります。
また、特に油圧式はピストンを押し出す力が強いので、従来のブレーキよりも制動力そのものが強いです。
軽いブレーキタッチでも十分な制動力が得られるため、ツーリングなどで長距離を走る際に後半握力が低下してくる状況でも楽にブレーキを掛けることができます。
また、ロードバイクのドロップハンドルですと、手の小さな方はブレーキレバーに指が掛かりにくいという悩みもあるかと思います。
その点でもディスクブレーキは指一本でも十分とされる制動力なので、安全性が増します。
そして、これも油圧式に限りますが、トラブルが少ないのも大きなメリットです。
油圧式はブレーキパッドとローターの間隔を常に一定に保つように、ブレーキ本体が自動的に微調整する仕組みになっています。
ですから、タイヤ交換などで車輪を脱着した際などは位置がずれてしまうこともありますが、油圧式であればその心配はありません。
前項でもお話ししたように、メリダ・スクルトゥーラには油圧式が3機種ありますので、そちらを選ぶメリットも大きいですね。
メリダ・スクルトゥーラに見るディスクブレーキのデメリット
前項ではディスクブレーキのメリットをお話ししましたが、デメリットも考えられます。
まずは、制動に関わる部品が多く、フレームやホイールも専用設計で、強い制動力に耐える得る強度が必要なので、重量が嵩みます。
メリダ・スクルトゥーラに同グレードの「スクルトゥーラ4000」と「DISC 4000」がありますが、DISC 4000の方が200gほど重くなります。
しかし、デメリットとしましたが、プロのレースならまだしも、ホビーライダーなら200g程度の差は比較しても明確に感じられるかは疑問です。
しかも、以前ならもっとはっきりと重かったので、進歩が伺えます。
次に考えられるのは価格で、これはかなりはっきりした差が出ており、上記の4000とDISC 4000の比較では、約4万円高額になります。
これも重さと同じで、要因がブレーキだけではないので、完成車にすると割高にはなります。
あとは、長時間使用するとブレーキパッドが高熱になることで制動力が低下する「フェード現象」もデメリットの一つですが、これに関してはメリダは対策を施していますので、のちほどご説明します。
メリダのディスクロードバイクの歩み
それではここから、メリダ・スクルトゥーラのディスクブレーキ搭載モデルを確認していきます。
メリダのロードバイクにディスクブレーキが初めて搭載されたのは2016年、未舗装路をメインコースとする石畳のロードレースに使用される、エンデュランスモデルの「ライド」でした。
全ロードバイクの中でもライドの2機種のみ、需要が少ないことをうかがわせるラインナップでした。
2017年、メリダがスポンサーを務めるプロチームが変わったこともあり、新たにスクルトゥーラにもディスクブレーキモデルが加わります。
この年は試験的ながら、世界最高峰の「UCIワールドツアー」でディスクブレーキが解禁されたこともあり、スクルトゥーラも実戦に投入されています。
そして、2018年にはエアロロード「リアクト」にも新たに3機種、そして全てがディスクブレーキ搭載のグラベルロード「サイレックス」も登場し、ラインナップが充実します。
2018年のロードバイクは3割以上がディスクブレーキモデルになりましたが、メリダはこれでもまだ少ない方ですので、ディスク化の流れは確実に押し寄せてきていると言えます。
メリダ・スクルトゥーラのディスクブレーキ搭載車~カーボンフレーム編
それではメリダ・スクルトゥーラの2018モデルの中から、いくつかディスクブレーキ搭載車をご紹介します。
【SCULTURA(スクルトゥーラ) DISC TEAM-E】
参考価格:¥1,296,000
プロチーム「バーレーン・メリダ」が実戦で使用するモデルです。
バーレーン・メリダは前項でも触れたエンデュランスモデルではなく、このスクルトゥーラを石畳レースに投入しています。
その分このディスクブレーキモデルは、28c(28㎜)のタイヤにも対応する広いクリアランスがあります。
また、リア(後輪)ブレーキは先ほども触れましたがフェード現象を起こしやすいので、熱を放出するフィンが付いた「ディスククーラー」が搭載されています。
コストの関係かと思いますが、現状ではカーボンフレーム車のみですが、過酷な環境で戦うレースモデルには必須でしょう。
【SCULTURA DISC 4000】
参考価格:¥258,120
カーボンフレーム最廉価モデルにもディスクブレーキ搭載車があります。
シマノ製のディスクブレーキにディスククーラーまで搭載して、8.3㎏(50サイズ)というのはかなり軽量な部類です。
「CF2」というフレームはチーム仕様を基礎とし、少し乗りやすさにも配慮したものですので、レース志向が薄い方でも満足のいく仕上がりになっています。
メリダ・スクルトゥーラのディスクブレーキ搭載車~アルミフレーム編
前項に引き続き、メリダ・スクルトゥーラのディスクブレーキ搭載車をご紹介します。
【SCULTURA DISC 700】
参考価格:¥225,720
スクルトゥーラのアルミフレームでは、ハイエンドモデルである「700」のディスクブレーキ仕様です。
メリダのアルミ成形技術はカーボン並みの自由さと美しい造形がアピールポイントですが、同時に耐久性にも優れていますので、ディスクの強い制動力を受け止めることができます。
このモデルの基礎であるスクルトゥーラ700はシマノ・105のフルコンポですが、105にディスクブレーキが用意されていなかったので、シマノ製ですがノンブランドになっています。
しかし、105は2018年にモデルチェンジを果たし、ディスクブレーキが用意されましたので、2019年からはこちらにも採用される可能性があります。
【SCULTURA DISC 200】
参考価格:¥140,292
スクルトゥーラ唯一の機械式ディスクブレーキ搭載車になります。
先述通り、油圧式に比べるとディスクブレーキの本領を全て発揮できるものではありませんが、荒れた路面やアップダウンのある地形の場所をメインに走るのであれば必要かと思います。
ただ、このモデルに限らずよく聞く事例なんですが、機械式から油圧式に交換したいという方が多いです。
しかし、そうなると本体はもちろんレバーは必須、場合によってはローターまで交換が必要なので、費用がかなり嵩んでしまいます。
そのため、もしこの記事をお読みになって油圧式がよいと思われたら、最初から上記の「700」にしておいたほうが、長期的にはそちらの方がお得です。
制動力の強さは感動もの
今回は最近トレンドになりつつある、ディスクブレーキ搭載のロードバイクについてお話ししました。
筆者の独断ではありますが、以前はデメリットされていた重量や熱の問題がクリアされてきている分、メリットが目立ってきた印象です。
油圧式についてはまだ少し割高感がありますが、あの軽いタッチでしっかり効く感覚は感動ものなので、検討する価値は十分ありますね。