プロマックス (PROMAX)というパーツメーカーがありますが、スポーツ自転車の完成車にもブレーキなどが採用されているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
比較的安価な完成車に採用されていることもあるせいなのか、あまり高い評価を受けることはないようです。
その理由も気になるところですので、今回はプロマックスのブレーキについて考えてみます。
プロマックスの自転車用ブレーキの使用感
まずは、筆者が以前使用していたプロマックスのブレーキについての使用感からお話しさせて頂きます。
詳しい時期は忘れましたが、知人から譲り受けた自転車(ロードバイク)のキャリパーブレーキがプロマックス製でした。
当時の筆者はまだMTBしか乗ったことがなく、ロードバイクはこれが初めてでしたので、キャリパーブレーキの効きについては何も分からない状態でした。
そのため、MTBに比べれば制動力の弱さを感じていたものの、キャリパーブレーキが全体的にこのようなものであると認識していました。
それから数か月して、譲り受けた知人から、「そろそろブレーキシューを交換する時期だ」と言われ、交換することになったのですが、知人からのアドバイスもあり「シマノ」製を選択しました。
結果ですが、明らかに制動距離が短くなり、効き方がガツンと直線的に変わりました。
もちろん、新品同士の比較ではないので、プロマックスが不利な状況であったことは否めませんが、それを加味してもシマノの方が制動力では上、と言わざるを得なかったです。
自転車のブレーキの効きは制動距離の長さも関係
前項でお話しした、プロマックスのブレーキの使用感ですが、それ以来、他の自転車でもプロマックスのブレーキとは巡りあっていないので、現状は正直分かりません。
シューを交換したあと、ほどなくしてブレーキ本体も交換しましたが、あとから思えばプロマックスのブレーキは、少し力が抜けたような弱さはあったかと思います。
しかし、交換するまでの数か月の間で、命の危険を感じるような制動の悪さは一度も感じませんでした。
力の抜けたような弱さに対して危険を感じる人もいるかもしれませんが、筆者はそこまでの危機感はありませんでした。
後にネットなどで見ていると、この弱さは多くの方が共通して感じていたことであり、レバーを強く引いてもガツンと来ない、という感触でした。
ロードバイクのキャリパーブレーキはスピードのコントロールが主で、元から「完全に止まる」ということは想定されていません。
しかし、当然のことながら公道を走る上では止まらなくては困るわけであり、その点では制動距離こそ長いものの、プロマックスも不安があるわけではなかったのです。
したがって、プロマックスのブレーキは、制動距離が長いことが「効きが悪い」という表現になるのかと思います。
自転車のブレーキはメンテナンスありき!
ここで別の観点から、自転車ブレーキの制動力を考えてみましょう。
ロードバイクのキャリパーブレーキはホイールのリムをブレーキシューで挟み付け、その間に起こる摩擦で回転が止まる(弱まる)という仕組みです。
そのため、リムやシューの汚れや摩耗が制動力に大きな影響を与えます。
制動力で最高の評価を受けているブレーキシューでも、すり減ってしまえば大きく制動力を落としますし、油でも付着すれば、滑って効かなくなってしまいます。
ですから、まずリムやブレーキシューがしっかりとブレーキを効かせられる状態になっているか、を確認する必要があります。
一概には言えませんが、プロマックスのブレーキは、入門編のグレードに付属していることが多いです。
そうなると、ロードバイク初心者の方が乗っている可能性が高く、メンテナンスの方法を知らない可能性もあります。
ですから、ブレーキが正常に効く状態ではないにも関わらず、それがブレーキの性能のせいにされてしまうこともあろうかと思います。
そのため、プロマックスのブレーキが、必要以上に評価を落とす結果になっているのかもしれません。
プロマックスのブレーキをメンテナンスしてみよう!
プロマックスのブレーキに限ったことではないですが、前項でお伝えしたように、自転車のブレーキシューやリムのメンテナンスは制動力に大きく関わってきます。
ホイールのリムをよく見ると、黒い筋のような物が付着していると思いますが、それがブレーキシューの削れたカスです。
そのくらい摩耗が激しいということなので、ブレーキシューは酷使されています。
また、ブレーキシューは地面と近いので、小石や金属片などの異物が噛み込みやすくなります。
そのままブレーキを掛けるとリムを傷つけますし、異音の原因にもなりますので取り除く必要があります。
また、摩擦熱で溶けたゴムがもう一回固まると、表面がツルツルしてブレーキの効きが悪くなります。
この場合は、紙やすりで表面を軽くこすり、ざらつかせる必要があります。
そして、ブレーキシューは表面に水はけ用の溝が切ってありますが、この溝の深さが1㎜以下になったら交換のサインです。
あとはリムの清掃ですが、注意事項としては、油脂が入っている洗剤だけは使わないということです。
リムやシューに油が付着すると、滑ってブレーキが効かなくなりますので、くれぐれも注意してください。
さらには、清掃では落とせないシューの頑固なこびり付きや細かい傷は「研磨」という方法もあります。
工業用の砥石を使ってリムのブレーキ面を削ると、表面が輝き、見た目にも美しくなりますのでおすすめです。
プロマックスのブレーキはアームの剛性が弱いかも?
先ほど、筆者の体験談の中でプロマックスのブレーキに対して、「力が抜けたような感覚」という表現をしました。
これはどうやら、自転車のブレーキアームの剛性の低さが原因のようです。
剛性というのは物質の変形する度合いで、「剛性が低い」というのは「変形しやすい」ということです。
剛性の低いアームは、ワイヤーの引きに耐え切れず変形しながらリムを挟みにいくので、どうしても力が逃げて弱い感覚になってしまう、ということです。
これを解消する方法ですが、根本的にはアームの剛性が高いものに交換となります。
ですが、交換となるとそう簡単な話ではないので、何とかしたいところです。
そこでいくつか方法がありますが、中でも「トーイン」の効果が最も高いようです。
トーインは、ブレーキシューを前方を狭くして後ろを広げ、前から見るとカタカナの「ハ」の字になるように調整するものです。
剛性の低いブレーキアームはブレーキを掛けるとタイヤの回転に巻き込まれて、前方にずれてしまいます。
そうなるとシューは前方が開いて、後方しか接地しないので制動力が落ちてしまいます。
そのため、トーインで開いてしまう前方を狭くしておくと、ブレーキを掛けた際に均等にシューに当たるようになりますので、制動力が強くなるということです。
プロマックスのブレーキでトーイン調整
それでは、前項でお話しした自転車のブレーキでのトーイン調整についてご説明します。
まずは、シューを固定しているボルトを六角レンチで緩め、シューがある程度動くようにします。
そしてシューの位置を、リムのブレーキ面からはみ出さない位置にしっかりと合わせて、ボルトを仮止めします。
ここで、厚さ1㎜程度の板や紙を、シューの後方1/4くらいの位置に挟み込み、ブレーキレバーを握って固定します。
この状態で仮止めしておいたボルトを緩めると、シューが自然に先ほど合わせた定位置に戻りますので、1㎜のトーインが付きます。
あとは、板や紙を抜いて、シューが動かないように手で押さえながらボルトを本締めして完了です。
なお、今回は1㎜のトーインとしましたが、シマノのサービスマニュアルでは0.5㎜を推奨しています。
しかし、シマノはブレーキアームの剛性が高いので0.5㎜でも効果があるのですが、シマノより剛性が低いプロマックスでは1㎜は必要、というのが筆者の判断です。
ただし、これ以上広げてしまうと、今度は前方に力が加わり過ぎてシューがリムを削ってしまうことがありますので、1㎜を限度と考えておいてください。
プロマックスのブレーキと付き合ってみる?
まとめるに当たっては、表題とした「プロマックスのブレーキが即交換レベルなのか?」に対する答えを出さなければいけませんね。
その答えは「ノー」であり、その理由は今回お伝えしたメンテナンスや調整で、制動力の維持が可能であると感じたからです。
やれるだけのことを行って、それでもまだ自分が納得のいく制動力が得られないとすれば、そこで交換を考えても遅くはない、ということです。