スペシャライズドはMTBでその名を世界に広めたメーカーですが、近年はロードバイクが主流になっています。
2017年にはツール・ド・フランスでステージ7勝を挙げ、最多勝メーカーになりましたが、その勝利に大きく貢献したのがエアロロードの「VENGE(ヴェンジ)」です。
そして、そのヴェンジにも使用されているエアロハンドルが人気となり、確実にユーザーさんも増えていますので、今回はその人気に迫ってみましょう。
スペシャライズドのエアロロードはハンドル周りが凄い!
今でこそ一つのジャンルとして確立された「エアロロード」ですが、スペシャライズドはいち早く開発に着手しており、パイオニア的な存在です。
2011年のツール・ド・フランスではヴェンジがマーク・カヴェンディッシュのステージ5勝に大きく貢献し、カヴェンディッシュは同年の世界選手権も制覇しています。
その後エアロロードが市民権を得てメジャー化してきたため、さらにその上を行く形で開発されたのが現在の「ヴェンジ・ViAS」です。
自社内の風洞施設「Win Tunnel」でのテストを重ね開発されたこの新モデルも、2017年のツール・ド・フランスにおいてステージ最多勝メーカーとなった大きな原動力でした。
その中でも注目度が高いのは、全くケーブル類が外に露出していないハンドル周りです。
ハンドルとステムをトータル設計することによって可能になっている、完全内蔵式のケーブルルーティングです。
また、ステムの角度を上げることに空力的なメリットがないとして、水平からややダウン方向に持って行ってあります。(現在は-17度)
しかし、そうなると人間の一般的な柔軟性を超えるくらいの前傾姿勢が求められてしまい、物理的に無理が生じますので、グリップが持ち上がっている「ライザー」タイプのハンドルで乗車姿勢を起こしています。
これによって、無理のない範囲で最も空力的に効率のよいポジション出しができるとされています。
スペシャライズドのエアロハンドル
前項でお話ししたスペシャライズドのハンドルは、単体でも販売されています。
グリップ部分がクランプ部分より25mmせり上がっているライザータイプの【S-WORKS CARBON AEROFLY +25】と、上ハンが水平な【S-WORKS CARBON AEROFLY】があります。
一般的なドロップハンドルは水平部分が円形の筒状ですが、こちらは薄く伸ばしたたような偏平形になっています。
一般的なものが「うどん」だとすれば、こちらは「きしめん」のようなイメージです。
この形状の方が空気抜けがよくなるので、これがエアロハンドルと呼ばれる一因でもあります。
また、前項でお話しした通り、ケーブル類を内蔵できる仕様で、シマノのDi2のような電動式変速にも対応しています。
なお、「ヴェンジ・ViAS」は完全にケーブルが見えない作りですが、あれはフレームとの一体設計でこそできる技なので、ハンドルだけでは難しいかと思われます。
しかし、実際にヴェンジ以外でこのハンドルを使用しているロードバイクを見ると、ハンドル周りのスッキリ感は群を抜いています。
スペシャライズドのエアロハンドルは「ライザー」タイプがおすすめ
スペシャライズドのエアロハンドルの話を続けますが、ヴェンジ・ViASにならえばライザータイプがおすすめになります。
ステムを水平から下向きの角度に付けることで空気抵抗を減らす一方、効率のよいポジションで乗れるライザーハンドルは空力性能を最大に引き出す組み合わせです。
また、筆者も経験していますが、ハンドルの高さに迷ってついフォークコラムを短く切り過ぎてしまうこともあろうかと思います。
こんな場合でも25mmせり上がっている分、ハンドル位置を高くすることが可能です。
さらに、ハンドルを高くするとそれだけ剛性が低くなってしまうのですが、ライザーならステムが低い位置のままでハンドル位置を上げられるのも有利です。
そして、エアロハンドルはどうしても重量が嵩みますが、こちらは250g前後と軽量な方なので、重量のハンデも感じずに済みます。
それがスペシャライズド曰く、このハンドルにして40㎞走ったところ、タイムが17秒縮まったという触れ込みに繋がっているのかもしれません。
ドロップハンドルの選び方
前項でお話ししたスペシャライズドのエアロハンドルですが、別売りもされていますので、他のバイクや他メーカーのものにも取り付けが可能です。
そこでここでは、ドロップハンドルの選び方についてお話ししておきます。
まずサイズですが、ハンドルの幅、奥行き(リーチ)、そして落差(ドロップ)を見ていきます。
ハンドル幅は、下ハンを握り前に突き出した時の肩幅が理想とされています。
それよりも短くなると脇が締まり腕が内側に入りますので、空気抵抗は減りますが、ハンドルの制御が難しくなります。
反応がクイックになるので、例を挙げるとすれば少しの段差でもハンドルごと持って行かれる感じです。
反対に長くなれば制御はしやすくなりますが、空気抵抗が大きくなります。
次にリーチですが、水平部分からブラケットポジションまでの幅のことです。
ここの幅が広いとよりハンドルが前に出ていることになりますので、前傾姿勢が深くなります。
一般的には楽に乗れるということで、70㎜~90㎜が主流になっています。
そして、ドロップは上ハンから下ハンまでの距離、すなわちハンドルの落差を表しています。
落差が大きいほど下ハンを握った際の重心が下がりますので、前傾が深まります。
スペシャライズドのエアロハンドルのサイズ
ここでは前項でお話ししたサイズを、スペシャライズドのエアロハンドルに当てはめてみましょう。
まず幅ですが、380㎜、400㎜、420㎜、440㎜とあります。
一般的な平均でいくと、男性は400~420㎜、女性は380㎜以下がよいとされますが、あくまでも目安ですし、女性向けにはもうワンサイズ短いものが欲しいくらいです。
完成車では自転車本体のサイズによってハンドル幅が決まっていますので選択肢はないのですが、単体ならサイズを選べます。
次にリーチですが、こちらは80㎜と標準的ですが、上ハンがかなり平べったいので手の小さな方は握るのに少し苦労するかもしれません。
そして、ドロップが130㎜あるので、下ハンを握るとエアロハンドルらしい深めのポジションになります。
しかし、そこまで極端なサイズでもありませんので、車種やライダーを選ぶような難しさは感じられません。
なお、水平部分にはバーテープを巻かない(巻けない)仕様ですので、使用時はグローブを着用した方がよいかもしれません。
エアロハンドル取り付け時の注意事項
スペシャライズドのエアロハンドルはフルカーボン製です。
ハンドルに限らずカーボン製のパーツは繊細なので、扱いに慎重さが要求されます。
ハンドルもステムの締め付けボルトを締めすぎると割れてしまう可能性がありますので、規定のトルクを守って締めていく必要があります。
スペシャライズドの推奨トルクが取説やホームページに記載されていますので、それを超えない範囲で行ってください。
トルクは「トルクレンチ」を使用することで測ることができますので、自力で交換する場合はトルクレンチを使いましょう。
また、バイクを持って行き、お店で交換してもらうのもよいでしょう。
スペシャライズドのハンドルはサイズが豊富なので、店員さんに相談しながら決めるのもありです。
ハンドルにもエアロの時代が来るか?
今回は、スペシャライズドのエアロハンドルについてお話ししました。
エアロロードが全盛期になってきているということで、ハンドルも偏平な形状のものが今後増えていくと予測されています。
ハンドルは形状だけではなく、今回お伝えした幅、リーチ、ドロップなども考慮して、自分の用途や乗車姿勢も参考に決めてください。