自転車の「リムブレーキ」は車輪の回転を直接止める構造なので、よく見ると分かりますがアームの部分が非常に車輪に接近しています。
そのため、衝撃などで車輪とブレーキが常に擦れるような状態になることもあり、異音がしたり片効きの状態になって危険な場合があります。
ブレーキは乗り手の命を預かっていますので、トラブルを見過ごしてはいけません。
そこで今回は、ブレーキが擦れる場合の対処法をお話していきます。
自転車のリムブレーキは車輪と擦れる状態になりやすい
冒頭でお話した「リムブレーキ」ですが、ママチャリの前輪や、スポーツバイク全般に使用されている、自転車の中でもポピュラーなブレーキです。
「リム」はホイールの外周でタイヤがはまる部分ですが、そこで車輪の制動を行うのがリムブレーキです。
ブレーキのアームの先に付いている「ブレーキシュー」が、ホイールのリムをつかんで回転を止めるというイメージです。
ブレーキシューはゴム製でリムは金属のため、その間に摩擦が起こり回転が止まる(遅くなる)仕組みです。
ブレーキレバーを引くと繋がっているワイヤーが引っ張られ、本体のアームを動かします。
ワイヤーが動かすアームの範囲はそれほど大きくないので、あらかじめアームと車輪は近い位置にあります。
リムブレーキの場合、アームの先のブレーキシューとリムの間隔は1㎜~2㎜が正常といわれています。
そのため、もう最初からくっ付いてしまっているようなものですので、少しでもどちらかがずれれば、シューとリムがすぐに擦れる状態になります。
自転車のブレーキで車輪と擦れるのは「ブレーキシュー」
今回は自転車の「リムブレーキ」が、車輪と常時擦れる状況の改善を考えていきます。
まず考えられるのは、ブレーキシューの「ズレ」です。
ブレーキシューをアームに固定するボルトが緩んで、シューの位置がおかしくなったと思われます。
シューが動くようならそのまま、動かないならボルトを少し緩めてから、リムに擦らない位置に移動させます。
リムから1~2㎜の間隔をとり、リムの外周に対してシューがなるべく平行になるようにして固定ボルトを締めます。
それを左右両方行いますが、それでもまだ片側だけが当たってしまう場合があります。
「片効き」という状態ですが、これは車輪が真っ直ぐに入っていないことや、リムが歪んでしまっている可能性があります。
それについては後述しますが、調整ボルトがある場合は微調整が可能です。
文章だけでは難しいので写真や動画で確認することをおすすめしますが、ブレーキシューをリムに近づけたり離すことができます。
なお、調整ボルトが付いていない自転車については、シューのズレを修正するところまでしかできませんので、自転車屋さんに修理をお願いするのが賢明です。
自転車のブレーキが車輪と擦れるのは本体が原因のこともある
リムブレーキと車輪が擦れる問題ですが、多くの場合は前項でご紹介した方法で直りますが、それでもダメな場合はブレーキ本体や車輪に問題があるかもしれません。
まず、根本的にアームが曲がってしまっている可能性があります。
特にスポーツバイクは慣れない内は転倒してしまったりするので、起こりやすいトラブルの一つです。
修理が効くレベルかもしれませんが、そこは下手にいじらず自転車屋さんに任せましょう。
万が一交換となったとしても、リムブレーキの「キャリパーブレーキ」や「Vブレーキ」なら、約3000~4000円(パーツ+工賃)で済みます。
次に考えられるのは、車輪がフレームに真っ直ぐはまっていないことです。
フレームと車輪の中央が一致しているかどうかを確認して、ズレているようであればブレーキの片効き状態の原因かもしれません。
ママチャリは簡単に車輪が外れないので厳しいですが、スポーツバイクはワンタッチで脱着できますので一度外してはめ直してみましょう。
ホイールが歪んでブレーキに擦れる可能性は?
前項でお話したフレームと車輪の位置関係は、単なるズレであればはめ直してみれば解消することもあります。
しかし、もっと深刻なケースとして、リムが歪んでしまっている可能性があります。
これは高級なホイールでも起こる現象で、故障ではありません。
ホイールは車輪中央の「ハブ」から左右に分かれて伸びる「スポーク」が、リムを支えています。
ホイールは、左右のスポークが互いに引っ張り合うことでリムの真円度が保たれているので、自転車は真っ直ぐに走っていけます。
しかし、走行中の衝撃などにより片方のスポークの留め具が緩んで、テンションが下がってしまうことがあります。
そうなると、リムはテンションが下がったスポークとは反対側に引っ張られてしまうので、どちらかに歪んでしまいます。
リムが歪むと車輪は波を打ったように転がりますので、左右どちらかのブレーキシューに常時擦れるというわけです。
ブレーキシューとリムが擦れるのは極度の「振れ」かもしれない
前項でお話したリムが歪んでしまう現象を「振れ」と呼び、修正することを「振れ取り」といいます。
ブレーキシューとリムが擦れるほどの振れは、相当に進行してしまっている状態なので、振れ取りが必須のレベルです。
振れ取りは簡単にいえば、緩んだ留め具を締め直すということなので、慣れてしまえば作業自体はさほど難しくありませんが、初期投資が高めです。
振れが出ていることや、修正が済んだ後の確認ができる「振れ取り台」というものが必要ですが、これが1~1.5万円ほどします。
また、前項でお話したホイールがフレームに対して真っ直ぐに入らない現象を修正する、「センター出し」まで行うとなると、さらに別の工具も必要です。
振れ取りは、自転車屋さんでホイール1本1000円前後でやってくれますので、任せてしまった方がよいでしょう。
親切なお店であれば作業の行程を見せてくれますので、今後自力で行う際の参考にもなるので、なおさら最初は専門家にまかせましょう。
ブレーキシューの摩耗も擦れる原因
自転車のリムブレーキが車輪に擦れる話をしていますが、ブレーキを掛けた時に「ピタッ」という吸い付く感覚ではなく、擦れるような感覚になることがあります。
ブレーキシューはゴムのため、すり減って摩耗します。
そうなると、ゴムのグリップ力が弱くなりシューがリムをしっかりとつかめなくなるので、擦れるような感覚になります。
その際は、シューを確認して頂き、表面の溝が無くなっていたら交換をしてください。
なお、ママチャリの場合はリムの素材によって使用するシューが違いますので、自転車屋さんで確認してから行いましょう。
また、シューはゴムの部分が無くなってしまうと、ブレーキが効かなくなりますので、溝が1㎜くらいの深さになってきたら、交換を考えてください。
シューの溝がまだあるのに擦れるような場合は、ツルツルになってしまっていることが考えられます。
その場合は、紙やすりで軽く削ってあげると、ザラザラになりグリップ力が戻ります。
いずれにしてもブレーキシューはブレーキの生命線なので、定期的に状態を確認する必要があります。
ブレーキシューと車輪が擦れることを放置してはいけない
今回はブレーキと車輪が擦れる現象について、原因や対処法を考えてきました。
単なるブレーキシューの取り付け角度の問題であればすぐに修正可能ですが、重大な問題なこともあるので放置してはいけません。
この問題は自分でできる微調整以外は、自転車屋さんに修復をお願いするというスタンスが賢明なので、くれぐれも無理しないということですね。