ファニーバイクと言われても、ピンとくる人は少ないと思います。
もともとは、タイムトライアルの競技用に開発された、前輪が後輪よりも小さい自転車のことです。
また、ピストとも形状が似ているので、ファニーバイクへのカスタマイズを見かけたりします。
今回は、そんなファニーバイクについてお話したいと思います。
ファニーバイクとは?
funny(ファニー)とは、【奇妙】【こっけい】【おかしな】といった意味ですので、ファニーバイクは奇妙でこっけいなおかしい自転車ということになります。
普通の自転車ではまず考えられない、前後に違う大きさのホイールがついているので、確かに奇妙ですよね。
極限のスピードを要求されるタイムトライアルなどでは、空気抵抗を減らす方策をいくつも考えなくてはいけません。
そのひとつが、後輪よりも前輪のホイール径を小さくすることで、前重心を強くしたファニーバイクだったわけです。
前輪が下がったぶん、フォークも短くなり、フレームはトップチューブが前下がりの独特な形状をしています。
そのため、ドロップハンドルでは位置が低くなりすぎるので、ブルホーンバーが採用されます。
こんな奇妙な形をしているので、ファニーバイクと呼ばれたわけですね。
ただ現在では、前後のホイールの大きさが同じことが規則になってしまったので、レースの世界からは姿を消しました。
ピストの前輪を小さいものにして、ファニーバイク化を図るカスタマイズは見たことがあります。
現在、市販車として、新しいファニーバイクを製造・販売しているのは、ごくわずかでしょう。
ピストとは?
前項でピストと言う言葉も出てきましたので、簡単に説明しておきましょう。
ピストもファニーバイク同様に元々は競技用の自転車で、室内のトラック競技や競輪に使われる自転車で、トラックレーサーと呼ばれることもあります。
競技用のものにはブレーキが付いていませんが、市販車は公道を走れるようにブレーキが装着されています。
ギアが単一のシングルスピード車であり、一般的な自転車が持つラチェット機構を持たない固定ギアとなっています。
現在の市販車は、ホイールの左右を入れ替えることで、フリーホイールとしても使えるものが多いです。
変速関係のパーツが付いていないぶん、軽量になり、よりスピードに特化したスポーツ自転車です。
固定ギアはペダルとホイールの動きが一体化しているので、自転車が止まるまでは、ペダルが回り続けます。
そのために坂の下りなどで足を離してしまったりすると、ペダルが地面に当たって事故になる可能性がある、扱いの難しい自転車でもあります。
アメリカの「LEADER BIKES」というメーカーが、ブレーキを装着し、ギア比を街乗り向けにして、ピストを広めました。
ファニーバイクの新車はほとんど見当たらない
ファニーバイクにしてもピストにしても、元は競技用の自転車だったものを、公道でも走れるようにアレンジされたのが、現在市場に出ているものと考えて良いです。
ファニーバイクは、レースでの使用が禁止されてから久しいので、自転車ショップが自分でフレームから組み立てて、中古として販売しているのは見られます。
ですが、新車として扱っているメーカーは、ほぼ皆無に等しいです。
まして、レースで使用不可となった現在です。
トップチューブが下がっているファニーバイク風のフレームは、ブルホーンバーを付けたときにポジションが上がってしまわないようにするだけのためで、ファニー化するだけのジオメトリのものではありません。
そのため、本気でファニーバイクを探している方は、オークションなどで昔ながらの完成車を探すか、フレームを見付けて自分で組み上げるかです。
ピストはファニーバイクにはならない
ピストは今でも「LEADER BIKES」のような専門メーカーもあり、シングルスピード車として各メーカー取扱いがあります。
そのためピストをファニーバイクのようにカスタマイズすることを考える人が多いのだと思います。
ファニーバイクの最大の良さは前輪に小さめの24インチ、後輪に大口径の700cを装着していることです。
そのため、空気抵抗を受けやすい前輪は小径車並みの抵抗で済み、後輪はロードバイク並みの変速性能と、スピードの維持ができるのです。
これにフレームのジオメトリによって、前傾姿勢がきつくなることが加味されて、驚異のスピードが生み出されるということです。
そのため、ピストの車輪の大きさを変えただけでは、ファニーバイク本来の性能とまでは難しいです。
もちろん、前輪を小さくすることでハンドル操作がクイックになるメリットは否定しません。
ですが、元々空気抵抗が少なくなるように設計されているピストが、見た目意外に劇的な変化があるかどうかは微妙です。
ファニーバイクやピストと同じ発想のカスタマイズ
ファニーバイクは、ホイールの大きさを前後で変えてしまうという斬新な発想で、ピストをも凌ぐスピードを実現しました。
しかし、似たような発想は、スポーツ自転車の世界にも多数存在します。
まずは、前後にリム高の異なるホイールを装着する方法です。
ファニーバイクが禁止となったトラック競技などでは、むしろ当たり前のように、ピストの前輪にディープリムホイール、後輪をディスクホイールという組み合わせになっています。
また、ファニーバイクほど前後の高低差はありませんが、リム高を前後で変えている市販車もあります。
フロントフォークやブレーキの交換の可能性まであるファニーバイク化をするのであれば、ホイールの交換だけで済む、こちらの方がコスパも高いのではないでしょうか。
また、前後で違う太さのタイヤを履くのも、理屈は同じです。
実際にコンチネンタルの【ATTACK&FORCE】などは前輪23C、後輪25Cという組み合わせですが、かなりの人気タイヤです。
確かに、ファニーバイクを求めている人からすれば気休め程度に思えるかもしれませんが、危険を伴うカスタマイズではないので、試してみる価値は十分にあります。
ファニーバイクを前後輪同径にすることは可能か?
今ではレースの世界でも市販車レベルでも見られなくなったファニーバイクですが、逆にファニーバイクをピストやロードのように前後同径のホイールにしたいと思っている人が、ネット上で質問しているのを見たことがあります。
ロードバイクを求めると、ギアの多段化など別の要素も出てくるので、とりあえずピストと同じ状態にすることが可能なのかということですが。
まず、フレーム形状が前重心すぎるので、ドロップハンドルは無理です。
ですが、前輪の交換だけなら、フロントフォークを交換すれば、700cのホイールをはめることはできます。
ただ、ファニーバイクのフレームは直進力を高めるために、ヘッドアングルが寝ています。
これを700cにすると、ますます寝てしまうので、ハンドルが切りにくくなり、街乗りには適さなくなってしまいます。
また、フロントが上がりますので、当然のことながらファニーバイクよりは上体が起き気味になるので、進まないと感じる自転車になるとは思います。
そのため、あまりおすすめできるカスタマイズとは言えません。
ファニーバイク化は難しい
今回はファニーバイクのお話をしてきましたが、想像以上に難しいことが多い自転車だなと思いました。
他のタイプの自転車とのカスタマイズの互換性が取れませんので、唯一無二の存在と考えなければダメですね。
また現在では、入手も困難ですから、情報を集めるだけでも苦労する覚悟をしておいてください。