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メリダ・スクルトゥーラ9000はなぜチームに採用されなかった

2018.12.6

メリダにはかつて「SCULTURA(スクルトゥーラ)9000」というフラッグシップモデルがありましたが、プロチームへの供給はされませんでした。

順調にレースでの実績を積み重ねていた矢先の出来事であり、言葉は悪いですがメリダにとっては黒歴史とも言えるモデルになってしまいました。

今回はそんなスクルトゥーラ9000を振り返ります。

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メリダとロードレースの関わり

今回はスクルトゥーラ9000についてお話ししますが、冒頭で触れました通り、このモデルを語るにはメリダのレース活動が欠かせませんので、まずはそこからお話ししていきます。

MTBの世界では古くからトッププロチームに機材を提供し、オリンピックの金メダルや世界選手権優勝に貢献してきた歴史があります。

しかし、ロードレースでは世界のビッグレースに参戦するのが世界の主要メーカーの中ではかなり遅い方で、2013年にようやく初参戦を果たしました。

かつてはアレサンドロ・ペタッキなどの名選手も所属していた「ランプレ」のセカンドスポンサーとなり、チーム名称も「ランプレ・メリダ」としてバイクの供給を始めました。

その最初のチーム供給モデルがスクルトゥーラであり、市場モデルとして発表された「SCULTURA CF TEAM-E」はフレームセットで約50万円、完成車で約100万円という、これまでのスクルトゥーラではあり得ない価格設定になりました。

このような、派手なデビューを飾ったメリダですが、最初の2シーズンは目立った戦績が残っていないので、厳しいシーズンを送っていたようです。

そして、2015シーズンランプレからのチームオーダーに、スクルトゥーラの名前はありませんでした。

それまでスクルトゥーラと共に供給されてきた「REACTO(リアクト)」と「RIDE(ライド)」は継続採用でしたので、明らかにスクルトゥーラだけが外されてしまった格好でした。

メリダが使用するカーボン素材の違い

メリダはフレームに使用するカーボン素材の詳細は明らかにしていませんが、2015シーズンよりフレームの表記が現在も使用している「CF」となりましたので、何らかの変化があったのは明らかです。

そして、2015モデルの最高グレードはリアクトTEAM-Eが「CF4」、スクルトゥーラ9000とライドTEAM-Eが「CF5」というフレームになりました。

上記したように詳細は明かされていませんが、CF4は現在も使用されていますので、おおまかな特徴は認識できます。

メリダのCFは後ろに付く数字が大きいほど、軽量で高弾性になるようです。

弾性というのは、物質を変化させようとして力を加え、それを止めた時に元に戻ろうとする性質のことです。

高弾性というのは、変化させようとしても元に戻ろうとする力が強いので変化しにくいということであり、しなりが無く硬いということになります。

また、これはメリダに当てはまるかどうか分かりませんが、一般的にこういった高弾性のカーボンは少ない本数の糸で繊維が編み上げられているため軽量になりますし、隙間を開けずぎっちりと編み込んであるので余計に硬くなります。

メリダが発表したスクルトゥーラ9000の欠点~「CF5」の高弾性

前項でお話ししたフレーム素材ですが、メリダは2016年シーズンを前にスクルトゥーラのチーム供給モデルを「CF4」に変更し、再採用にこぎつけています。

そして、後述しますが、メリダは2015シーズンにチームモデルになるはずだったスクルトゥーラ9000が、様々な面でレースモデルとして欠点を抱えていたと発表しています。

その一つに挙げたのが、CF5の高弾性過ぎる部分です。

高弾性のカーボンは繊維をガチガチに固めている分、破断しやすいので強度が落ちるという性質があります。

そのため、レース中の落車によってフレームが割れてしまう危険性もありますし、厳しい環境の中でのレースも多いため、バイクを輸送中に起こるトラブルもあるそうです。

車のルーフラックなどに固定して運ぶ際に、100㎞にも渡る峠を越えることもあり、その衝撃でチューブの変形やヘッドパーツがダメになることもあります。

そんな状況ですと、高弾性なCF5は繊細過ぎて、プロチームでも扱いが難しいということになったようです。

スクルトゥーラ9000からチームモデルへのメリダの改善点①トレンドに適合

前項でメリダ・スクルトゥーラ9000は、CF5フレームの高弾性過ぎるがゆえの扱いの難しさをお伝えしました。

そして、ここではメリダが発表したその他の欠点と、2016モデルに向けた改善点をお伝えします。

まずはタイヤの太さですが、今では転がり抵抗や衝撃吸収の観点から25cが定番になっていますが、2015年はまだ過渡期にあり、スクルトゥーラのチームモデルは従来通りの23cにしか対応していませんでした。

これをチームが良しとせず、一つの欠点と指摘されてしまったそうで、2016モデルより25cのタイヤも装着可能なクリアランスをフレームに確保しています。

続いて指摘されたのは、空力性能です。

スクルトゥーラ9000は高弾性で軽量でありながら空力性能が不足していたため、時速が40~50㎞/hにもなるプロの世界では高速域でパワーロスが発生し、特徴を活かしきれないことが指摘されました。

実際にランプレメリダの選手が、平坦コースではエアロ形状の「リアクト」の方を重用していたというエピソードも残っています。

そこでメリダは2016モデルより、進行方向後ろ側のチューブをかまぼこ状にカットする独自のカムテール形状「NACA FASTBACK」を採用、リアクトに近づく空力性能が得られたとしています。

スクルトゥーラ9000からチームモデルへのメリダの改善点②快適性の向上

前項に引き続き、スクルトゥーラ9000の欠点を踏まえた上での、チームモデルへの改善ポイントをお伝えします。

スクルトゥーラ9000はヘッドチューブが長く、プロ選手が低いハンドルポジションを取れないと指摘されました。

そのため、このままでは独自にステムを下向きの物にしたり、トップキャップを外す必要などもあり、特殊要件となり支障が出る可能性も指摘されたといいます。

そこで2016モデルでは540サイズで5㎜、560サイズで10㎜短かくして、選手のポジション出しに配慮をしています。

また、リアブレーキをBB(ボトムブラケット)下のダイレクトマウントとしました。

これは空力性能の向上にも効果的ですが、シートチューブにキャリパーを付けないことで、強化目的のブリッジを廃止することができます。

そうなりますと、シートチューブにはしなりが生まれますので、衝撃吸収性が高まり乗り心地が格段によくなります。

当時からレースにおいても快適な乗り心地を求める声は多く、メリダがそこに配慮した形です。

そして、快適性向上に欠かせなかったのが、カーボン素材の変更です。

先述の通り、9000のCF5は硬くてしなりがない素材でしたので、衝撃吸収性がなく地面からの衝撃などがストレートに伝わってきました。

それを適度にしなりがあり、柔らかめの「CF4」に変更することで、衝撃吸収性を高め、快適性を向上させたのです。

スクルトゥーラ9000の教訓が今のメリダのレースシーンに活かされている

ここまでお話ししてきたように、スクルトゥーラ9000はチームモデルとしては少々欠点があり、改善が求められた経緯がありました。

しかし、この9000の失敗(あくまでもプロチーム用として)が、今のメリダのレースでの快進撃に繋がっているとも言えます。

独自のチューブ形状「NACA FASTBACK」や、タイヤのクリアランス問題は、9000がそのままチームに採用されていれば、もっと後に開発されていたかもしれず、開発されなかった可能性すらあります。

また、近年多くのメーカーがカーボンの素材を見直しているトレンドがありますが、メリダのCF5→CF4のように、弾性率を落としても強度や柔軟性を重視している傾向にあります。

メリダが世界に先鞭をつけたとまでは言いませんが、これも9000を教訓にした素晴らしい改善だったかと思います。

9000は2017モデルをもって廃盤となりましたが、良い意味での反面教師的な存在として歴史に名を残すモデルと言えるでしょう。

9000にも存在意義は十分にあった!

今回は、メリダのスクルトゥーラ9000についてお話ししました。

メリダ史上最も硬く、軽量なフレームだったかと思いますが、チームにとっては少々扱いに苦労するモデルだったようです。

ただ、それを糧にした新しいチームモデルが今も活躍しているように、9000も決して無意味なものではなかったのです。

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